秒速5センチメートルの感想
非常に良かった。
新海誠のどの作品より良かった。
感想を一言で言うなら
過去を忘れられるか忘れるべきかである。
主人公の貴樹は、親の仕事の影響で
小学生の頃から、転校を繰り返していて
先天的な体の弱さから活動的な少年というより
内向的で深い思慮を持つ少年だった。
この貴樹の環境や先天的なものが
貴樹と明里が結ばれなかった理由だと思う。
もし、貴樹に積極性があったら
鹿児島に転校後も手紙や電話を送っていた。
そうなれば、2人はまた会えたかもしれない。
2人は結ばれたかもしれない。
貴樹は、岩舟で明里と抱き合った時
どんどん物理的にも心的にも距離が離れていく中で、この瞬間は一瞬でありこれから訪れることがないかもしれないと思っただろう。
そこで、思慮が浅い人よくいえば
あまり物事を気にしない人や積極性がある人
だったら、転校後も手紙や電話を送っただろう。だが、貴樹はできなかった。
あの瞬間が一瞬であると悟ってしまったから。
明里はどうかというと
岩舟で貴樹と会う時、手紙を持っていた描写がある。貴樹と同様に、相手に伝えたいことを
手紙に書いてきたのだ。
しかし、貴樹と別れる時
手紙を渡さなかった。
いや、渡せなかったのだろう。
貴樹と抱き合った時、この温もりは一瞬であると悟ってしまったのかもしれない。
2人の思考が似ているからこその悲劇かもしれない。もし、一方が温もりを一瞬と感じなかったら、2人は結ばれたかもしれない。
話は戻るが、明里も温もりを一瞬だと感じたからこそ、手紙を渡せず貴樹に
『貴樹君は、これからも大丈夫』と言ったのだろう。つまり、私達はもう会えないかもしれないけど、貴方の幸せを願っています。という
意味だろう。
そして、明里はそこで気持ちにけじめをつけて
貴樹からの手紙を待ちつつも、新たな恋に向かっていったのだろう。
しかし、貴樹は気持ちにけじめをつけれなかった。付き合った人はいたが、ずっと
明里を想っていた。まるで、宇宙の深淵を
探し求めようとする探査機のように。
これを
男は名前を付けて保存、女は上書き保存
と簡単にまとめる人が多いが
そうまとめるのはもったいないと思う。
冒頭でも言ったが
過去を忘れられるか忘れるべきかと捉える。
貴樹は忘れられなかった。
明里は忘れてはないが新しく踏み出した。
初恋や過去に付き合った人を思い出す人は
いないだろうか。
そして、今や未来に目を向けようと
過去を振り返らないようにした人はいないだろうか。
私も、ずっと考えてるが答えがでない。